GLTDが、6年で7割増の市場 ― なぜ今?
従業員の長期休職が経営リスクになる時代。もしもの収入不安を放置すると、優秀な人材ほど離れてしまうおそれがあります。
特に採用競争が激しい業界では、GLTDの導入が差別化の鍵を握ります。
こうした背景のもと、従業員が病気やけがで長期に働けなくなった際の収入を補償する団体長期障害所得補償保険(GLTD)が、企業の間で広がっています。
本記事では、GLTDの導入を検討している企業の人事・総務・経営層の皆様向けに、市場動向とメリットを整理します。
日経によるとGLTDは6年で7割増
日本経済新聞によると、損害保険大手4社のGLTDを含む保険料収入は、2024年度に約420億円となり2018年度と比べて「約7割増加」していると報じられています。また、保険料収入の伸びが毎年一割程度のペースで続いており、保険商品としては異例の高い成長率だと紹介されています。
GLTDとは:シンプルで効果の大きい福利厚生
GLTDは、「Group Long Term Disability」の略称で、企業が保険会社と契約し、従業員が病気やけがで働けなくなった場合に、給与の一定割合を長期間にわたり補償する仕組みです。企業(事業主)が契約者となって保険料を負担し、従業員が働けない状態に陥った際に、保険会社から給与の一部が補償される仕組みになっています。(下記図を参照)
図1:GLTD(団体長期障害所得補償保険)の基本的な仕組みイメージ
GLTDは団体保険として加入することで、個人で加入する就業不能保険に比べて保険料負担を抑えやすい点も特徴です。
GLTD導入が進む3つの背景
GLTD導入は、雇用の流動化や長期休職リスクの顕在化を背景に、福利厚生の一環としてGLTDを導入する企業が増えているといえます。1. 雇用の流動化
日本いおいても転職が一般的になり、短い勤続年数の従業員が増えています。退職すると補償が受けられないなど従来の福祉厚生制度では十分にカバーできないケースが出てきたため、勤続年数に依存しない「公平性の高い福利厚生制度」が求められています。
2. 健康経営と従業員の安心確保
企業では、心身の健康維持が重要な経営課題になっています。GLTDにより、従業員が働けなくなった場合でも収入が守られるため、安心感の向上やエンゲージメント向上が期待できます。
さらに近年では、保険会社がGLTDに健康増進支援やストレスチェックなど予防施策を組み合わせた取り組みを進めており、健康経営と補償制度を一体で支える仕組みが拡大しています。
3. 人的資本評価の強化
人的資本の開示義務化を背景に「人への投資」の有無が企業価値に直結しています。生活基盤を守る制度を整備することは、離職防止と生産性向上の両面でプラスになり、対外的な評価にもつながります。
GLTD導入による企業メリット
GLTDは「万一の備え」で終わらず、経営の安定・従業員エンゲージメント向上・人的資本経営の推進といった複数の経営課題に同時にアプローチできる施策です。ここでは、企業にもたらす主な3つのメリットを整理します。
メリット1:経営の安定とコスト改善
GLTDがあることで、従業員が働けない期間の企業負担を軽減できます。・長期休職時に発生する追加負担を最小化
・人材流出や採用コスト増加の抑制につながる
メリット2:従業員の安心感向上
従業員が生活不安を抱えずに働ける職場づくりを支援します。・所得不安の軽減により働き続けやすい環境を実現
・職場への信頼感向上につながる
メリット3:採用力・定着率・ブランド向上
人的資本投資としての見える化にも貢献します。・採用市場で差別化できる福利厚生として活用
・人的資本ストーリーの裏付けとなり投資家にも説明可能
・優秀人材が安心して働き続けられる環境を提供
【関連記事】 GLTD(団体長期障害所得補償保険)とは?(前編)|人気の理由とGLTD導入メリットをわかりやすく解説
まとめ:福利厚生の土台にGLTDを
GLTD市場が6年で約7割拡大し、保険料収入の伸びが毎年一割程度のペースで続いている事実は、企業と従業員の双方が「働けなくなるリスク」に対する備えを強く求めていることの表れだといえます。福利厚生の選択肢が多様化するなかで、表面的なメニューを増やすだけでは十分ではありません。
従業員とその家族の生活を守るという観点から、まず所得補償の仕組みをしっかりと整えることが、これからの企業に求められる福利厚生制度です。
GLTDは、従業員の安心、企業の採用力と定着力、そして長期的な企業価値向上を支える制度として、誰もが安心して働ける企業づくりの土台となります。
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参照記事:日本経済新聞 2025年9月10日「従業員の休職時に所得補償」保険の導入、6年で7割増 福利厚生充実」


