
採用難や人材の流動化が進み、「ただ採用率を高めるだけでなく、社員を長く定着させること」が企業競争力の重要な柱となっています。特に中小企業においては、時間とコストをかけて採用した人材が短期間で離職してしまうことは経営リスクにつながりかねません。
こうした背景の中で、近年注目されているのがリテンション・マネジメントと呼ばれる人事施策です。本記事では、リテンション・マネジメントが離職防止につながる理由や具体的な取り組み方法について解説します。
リテンション・マネジメントとは何か
「リテンション・マネジメント(Retention Management)」とは、従業員の離職を防ぎ、組織内で長く活躍してもらうための戦略的な人事施策の総称です。これは単に報酬や評価を見直して離職を防ぐ一時的な施策ではありません。長期的に従業員との良好な関係性を構築し、働きがいや成長意欲を高め、安心して働ける環境を整える包括的な人材管理プロセスです。
「従業員の意欲が低下していて辞めそうだから条件を改善する」といった対症療法ではなく、辞めたいと思われない組織を作ることがリテンション・マネジメントの本質と言えるでしょう。
リテンション・マネジメントが離職防止につながる理由
リテンション・マネジメントが離職防止につながる理由は、従業員の離職理由に対して「攻め」と「守り」の両面からアプローチできる点にあります。●攻めの対策
・キャリアパスの可視化
・スキルアップや成長機会の提供
・評価制度を通じた達成感の創出
●守りの対策
・職場環境や人間関係の改善
・待遇や評価に対する不満の解消
・働き方や福利厚生による安心感の提供
離職理由の多くは、給与水準そのものよりも、不満の蓄積や将来への漠然とした不安にあります。
リテンション・マネジメントでは小さな不満や不安の要素を守りの対策で取り除き、さらに成長意欲を高める攻めの対策で離職の芽を摘むことができます。
また、近年は働き方や価値観の多様化により、従業員一人ひとりが職場に求めるものも変化しています。
報酬や評価などわかりやすい条件だけではなく、「自身の働き方を理解してもらえているか」「将来に対する不安を相談できるか」といった心理的な要素も重要視されています。
リテンション・マネジメントは職場における安心感の提供も大きなテーマとなるため、こうしたニーズの変化にも対応できるでしょう。
なぜ従業員の定着が必要なのか
そもそも、なぜここまでして従業員の離職を防止する必要があるのでしょうか。その理由は、従業員の定着が企業の成功や持続可能性において重要な役割を担っているからです。
離職を防ぎ定着率を高めることで、企業が得られるメリットを見てみましょう。
あらゆるコストを削減できる
離職率が高い企業では、採用活動や研修、オンボーディングに多くのコストが発生します。特に中小企業にとって、採用コストの増大は経営を圧迫する要因になりがちです。従業員の定着率を高めることで不要な採用コストを抑え、経営の安定性を保つことにつながります。
業務の質が安定する
従業員が長く働くことにより、業務ノウハウや顧客理解が社内に蓄積されます。結果として、業務品質の安定や生産性の向上が期待できます。ベテラン従業員の存在は、新卒社員にとって「安心して長く働ける環境がある」という期待感にもつながるでしょう。
従業員のモチベーションが向上する
同僚や先輩の離職が続けば残った従業員の業務負荷が増え、心理的な不安やモチベーションの低下につながりかねません。一方で定着率が高い職場では、安心して働ける環境が整うため、組織全体の士気が向上します。
企業のブランド価値が向上する
離職が少ない職場は、「働きやすい会社」「従業員を大切にする会社」として外部から評価されやすくなります。これは採用活動においても大きな強みとなり、優秀な人材を惹き付けるアピールポイントになります。
リテンション・マネジメントの主な構成要素
リテンション・マネジメントは独立した施策で成り立つものではなく、人事管理に関するさまざまな施策を行い、包括的に社員の定着を図るものです。したがって、福利厚生の充実や社員研修といった従来の人事管理施策もリテンション・マネジメントに含まれます。リテンション・マネジメントを構成する主な要素は次の5つです。
1.福利厚生の充実
福利厚生は従業員に安心感を与える必要不可欠な要素です。健康保険や有給休暇など法定福利厚生に加えて、法定外の福利厚生も充実させましょう。中小企業においては、特別休暇や団体保険の導入などが取り組みやすい方法です。関連記事:中小企業が始める健康経営|すぐ導入できる福利厚生サービス一覧
2.成長機会の創出とキャリア支援
従業員の成長を支援する教育プログラムやキャリア開発の機会も重要です。研修制度やOJT、キャリア面談などを通じて、従業員が将来像を描ける環境を整えましょう。必ずしも大規模な制度である必要はなく、「どのような成長が期待できるか」を言語化するだけでも効果的です。3.報酬・評価制度の透明性
報酬や評価は、ただ高くすればよいものではありません。報酬や評価の水準よりも、「なぜこの報酬・評価なのか」が従業員に伝わっているかどうかが重要です。評価基準や昇給の考え方を明確に示すだけでも、従業員の納得感は高まるでしょう。4.上司や同僚との信頼関係
人間関係は離職理由の上位に上がりやすい要素です。上司や同僚との良好な関係は企業全体の士気にもかかわるため、良好なコミュニケーションとサポートができる体制を整えましょう。5.働きやすい環境
職場環境や業務内容に満足していても、仕事と私生活を両立できず、やむなく離職するケースもあります。柔軟な働き方や休暇制度の整備によって、ワークライフバランスを取りやすい職場にしましょう。小規模でリテンション・マネジメントを始める方法
リテンション・マネジメントはさまざまな施策の積み重ねであり、大規模な予算がなくても実施可能です。予算や人員に限りがある中小企業の場合、次のように小さな取り組みから始めることをおすすめします。・離職理由を記録し、傾向を把握する
・簡易的な満足度アンケートを実施する
・1on1面談を定例化する
・時短勤務やフレックスタイム制など柔軟な働き方を導入する
・定期的に社内勉強会を実施する
いずれも今すぐ無料で実施できる取り組みです。複数の取り組みを積み重ねることで、長期的に従業員とのつながりを深めていきましょう。
まとめ
リテンション・マネジメントは、「この職場で働き続けたい」と思われるための人事施策です。まずは離職理由の記録や分析、満足度アンケートや社内勉強会の実施など、小さな取り組みから始めてみてください。
なお、福利厚生制度の充実を検討している企業には、割安な保険料で従業員の長期休業を補償するGLTD(団体長期障害所得補償保険)がおすすめです。
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関連記事:GLTD(団体長期障害所得補償保険)とは?(前編)|人気の理由とGLTD導入メリットをわかりやすく解説


