
少子化の進行や初任給の上昇により、新卒採用市場は依然として売り手市場が続いています。「大手ほどの待遇を提示できない」と悩む中小企業は少なくありません。
そこで今回は、各種調査をもとにZ世代が職場に求めている条件を整理して解説します。新卒採用に悩む中小企業はぜひ参考にしてください。
少子化で新卒採用は難化している
リクルートワークス研究所の調査によると、2025年3月卒の大学生・大学院生対象の求人倍率は1.75倍。2024年3月卒時の1.71倍より0.04ポイント上昇しており、新卒採用は売り手市場が続いています。
さらに、産労総合研究所の調査では、2025年4月入社者の初任給を引き上げた企業は7割超に上りました。
待遇競争が激化する中で、中小企業が大手と同じ土俵で戦うのは容易ではなくなっています。
しかし、Z世代の学生が企業選びで重視するポイントは必ずしも給与水準だけではありません。
自社の強みを正しく伝え、Z世代の価値観に沿った打ち出し方をすれば、大手に劣らない新卒採用を実現できる余地があります。
参考:
リクルートワークス研究所「第41回ワークス大卒求人倍率調査」
産労総合研究所「2025年度 決定初任給調査」
Z世代の大学生が「ここで働きたい」と思う職場の特徴
マイナビ・リクルート・大和ライフネクストの3つの学生調査をもとに、Z世代が希望する職場の特徴を解説します。3つの調査を総合すると、Z世代の大学生は企業の安定性や福利厚生に加えて、自身の求める働き方やライフスタイルとの調和、安心感を重視していることがわかります。
調査名 | 特徴 |
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マイナビ 2026年卒大学生就職意識調査 |
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リクルート 2025年新卒採用大学生の就職活動に関する調査 |
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大和ライフネクスト株式会社 「2025年卒・Z世代の就活トレンド」 |
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安定している企業が人気
マイナビの調査では、7年連続で「安定している(51.9%)」が企業選びの最多回答となりました。リクルートの調査でも、仕事に求めることのTOP3は「安定(42.6%)」「貢献(31.1%)」「金銭(30.0%)」となっています。
物価高に伴う経済面への不安により、雇用の安定はゆるぎない軸となっています。
配属先が明確で転勤がない
リクルートの調査によると、応募動機の最多回答は「希望する勤務地で働けそう(68.5%)」。そして、入社意向の低下にもっとも影響を与える項目は「入社前に勤務地がわからない(66%)」となっています。
マイナビの調査でも転勤の多い会社は「行きたくない会社」の上位に位置しており、入社後の勤務地や配属先が明確であることが求められます。
やりたい仕事ができる
やりたい仕事(職種)ができるかどうかも重要です。マイナビの調査では、企業選択で「安定している」の次に多い回答が「やりたい仕事(職種)ができる(27.2%)」でした。
リクルートの調査でも、内(々)定受諾の最終的な決め手は「やりたい仕事(職種)ができる」となっています。
マイナビでは「やりがいのある仕事であれば中堅・中小企業でもよい」という回答が前年より増えました。会社の規模よりも、自分らしい働き方ができるかどうかが重視されています。
ワークライフバランスがとれる働き方
マイナビ調査では、大学生の就職観の最多回答は「楽しく働きたい(37.4%)」、次いで「個人の生活と仕事を両立させたい(25.6%)」となっています。大和ライフネクストの調査でも、魅力を感じる福利厚生の1位は「休暇制度(53.8%)」、2位は「働き方(50.8%)」でした。
自分がやりたい仕事で楽しく働けること、加えて柔軟な休暇制度やテレワークなどにより、ワークライフバランスの充実がとれる会社が求められています。
安心できる職場環境
「安心できる職場環境」があることも重要です。たとえば、マイナビ調査では行きたくない会社の上位3項目が「ノルマのきつそうな会社(38.2%)」「転勤の多い会社(31.0%)」「暗い雰囲気の会社(24.1%)」でした。
裏を返せば、安心できる職場環境に腰をすえて楽しく働きたいということでしょう。
Z世代は残業や長時間労働を一律に拒否するわけではなく、心理的安全性が確保され、安心できる職場関係で働けるかどうかを重視しています。
中小企業が取り組むべきZ世代向け新卒採用の要領
複数の調査が示すように、Z世代が重視するのは企業規模や給与だけではありません。ここでは、Z世代の価値観にそった新卒採用を行う要領を解説します。
給与・福利厚生を徹底的に見える化
Z世代は情報感度が高く、不透明な情報や誇張された表現に敏感です。給与テーブルや昇給制度など大切な情報ほどオープンにすることが信頼につながります。
住宅手当や資格支援を「総額」表記で見せ、入社後の支援を明快にするのも効果的です。 収入不安を減らす施策として、団体長期障害所得補償(GLTD)など「もしもの備え」を福利厚生に組み込むと安心感も訴求できるでしょう。
配属とキャリアの透明性
まずは入社前に勤務地と配属先を明示し、入社後のキャリアの見通しを示すことが重要です。加えて、OJTやジョブローテーションなどの環境を整備します。
小規模組織だからこそ、社員一人ひとりのキャリア形成を手厚く支援できることをアピールしましょう。
柔軟な働き方の工夫
柔軟な働き方とは、働く時間や場所を調整することで、個人の生活と仕事を両立できる働き方を指します。具体的には、在宅勤務や時間差出勤、フレックス勤務などの導入があります。
「制度がある」だけでなく「既存の従業員がどう活用しているか」を具体的に発信すれば、応募者のイメージが膨らみやすくなるでしょう。
ウェルビーイング施策
「安心して自分らしい働き方ができる職場であること」を示します。 具体的には、定期的な上司との面談や1on1、相談窓口の設置、有給休暇を取りやすい仕組みやノー残業デーの導入などがあります。相談窓口の活用事例や有給休暇の取得率などもあわせて示すと、形式的な制度だけではない職場とアピールできます。
まとめ
売り手市場によって新卒採用は難化していますが、Z世代が求める条件は意外とシンプルなものです。・企業の安定性
・配属やキャリアの見通し
・柔軟な働き方と学びの機会
・安心できる職場環境
これらの条件は大手企業にしか実現できないものではありません。
むしろ、意思決定のスピードが早く柔軟な制度設計が可能な中小企業だからこそ、実現しやすい側面もあるのではないでしょうか。
重要なのは、学生が自分の未来をイメージできるかどうかです。給与や企業の規模だけではなく、「この会社なら安心して成長できる」と感じてもらうことが採用成功のカギとなります。GLTDのような福利厚生を含め、自社の制度や文化を積極的に発信していきましょう。
「従業員を大切にする企業」「福利厚生が充実した企業」というアピールをする場合は、GLTD(団体長期障害所得補償保険)の導入という方法もあります。中小企業でできる対策を考えている人は、あわせて検討してみてください。
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著・監修
服部ゆい
金融代理店での勤務経験と自身の投資経験を活かしたマネーコラムを多数執筆中。
子育て中のママFPでもあり、子育て世帯向けの資産形成、ライフプラン記事の執筆が得意。