近年、人事・労務に関する法改正が相次いでおり、2026年以降も対応が求められる制度変更が予定されています。 来年以降も大きな法改正が予定されており、すでに決定している内容も含めて整理しておくことが重要です。
本記事では、今後予定されている主な法改正を時系列で一覧にし、企業の人事・労務部が抑えておくべき実務対応をまとめています。
直近の法改正
2025年後期の主な法改正予定一覧
| 施行時期 | 関連法 | 主な変更内容 |
|---|---|---|
| 2025年10月 | 育児介護休業法 |
・3歳から小学校就学前までの措置を2つ以上義務化 ・上記措置について個別周知・意向確認を義務化 ・仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮を義務化 |
| 2025年10月 | 雇用保険法 | 教育訓練休暇給付金の新設 |
| 2025年10月 | 健康保険法 | 19〜22歳の被扶養者の年収要件を130万円未満から150万円未満へ引き上げ |
| 2025年12月 | 税制改正 |
・基礎控除・給与所得控除の引き上げ ・19〜22歳の子を対象に特定親族特別控除を新設 ・扶養親族等の所得要件を10万円引き上げ など |
おさらい:2025年後期の法改正のポイント
2025年10月からは育児介護休業法に大きな改正があるため、どの措置を実施するか検討し、制度を整え就業規則などに明記しておく必要があります。あわせて、個別の意向確認・聴取・配慮なども義務付けられるためご注意ください。
また、2025年は税制改正の初適用となる年であり、年末調整においても例年より確認事項や対応が増えました。
扶養控除の基準変更などにより、従業員からの問い合わせが増えた企業も多く、人事・総務担当者にとって実務負担の大きい年だったといえます。
▼2025年の法改正の詳細は下記をご確認ください。
人事・労務関連の主な法改正予定一覧【2025年・2026年】企業が備える実務対応
2026年以降の主な法改正とポイント
2026年以降の主な法改正予定一覧
| 施行時期(年月は予定) | 関連法 | 主な変更内容 |
|---|---|---|
| 2026年1月 | 年金制度改正法 | iDeCo受け取り時の5年ルールを10年ルールに変更 |
| 2026年4月 | 子ども子育て支援法 | 子ども子育て支援金を健康保険料に上乗せして徴収 |
| 年金制度改正法 | 在職老齢年金の支給停止基準額を月51万円から月62万円に引き上げ | |
| 女性活躍推進法 | 男女間賃金格差の公表義務を301人以上企業から101人以上企業へ拡大 | |
| 労働安全衛生法 | フリーランスや一人親方も労災防止対策の対象へ | |
| 2026年7月 | 障害者雇用促進法 | 障害者雇用率を2.5%から2.7%に引き上げ |
| 2026年12月までに (※1) | 労働施策総合推進法 | カスタマーハラスメント対策を義務化 |
| 男女雇用機会均等法 | 就活セクハラ対策を義務化 | |
| 公益通報者保護法 | 報復人事に刑事罰を導入など | |
| 2027年1月(予定) | 労働安全衛生法 | フリーランスや一人親方も死傷病報告の対象へ |
| 2027年6月までに (※2) | 出入国管理法など | 技能実習制度を廃止し、育成就労制度を創設 |
| 2027年9月 | 年金制度改正法 | 厚生年金の標準報酬月額の上限を65万円から68万円へ引き上げ |
| 2027年10月 | 年金制度改正法 |
パートの社会保険加入を51人以上企業から36人以上企業へ拡大 (段階的に実施し、2035年10月には規模を問わず全企業へ) |
| 2028年4月 | 年金制度改正法 | 子のない配偶者への遺族厚生年金を原則5年の有期給付とする(段階的に実施) |
| 2028年5月までに (※3) | 労働安全衛生法 | ストレスチェックを50人未満の事業所にも義務化 |
| 2028年6月までに (※4) | 年金制度改正法 |
・パートの社会保険加入における「106万円の壁」を撤廃 ・iDeCo掛け金の上限を大幅に引き上げ ・iDeCoの加入期間を64歳までから69歳までに延長 |
| 2028年10月 | 雇用保険法 | 雇用保険の適用を拡大(週10時間以上のパートなど) |
| 2029年10月 | 年金制度改正法 | 5人以上の個人事業所は全業種が社会保険の適用対象に(経過措置あり) |
※1:公布日(2025年6月11日)から1年6か月以内に施行される予定のため、施行時期は今後確定します。
※2:公布日(2025年6月21日)から3年以内に施行される予定のため、施行時期は今後確定します。
※3:公布日(2025年5月14日)から3年以内に施行される予定のため、施行時期は今後確定します。
※4:公布日(2025年6月20日)から3年以内に施行される予定のため、施行時期は今後確定します。
※2:公布日(2025年6月21日)から3年以内に施行される予定のため、施行時期は今後確定します。
※3:公布日(2025年5月14日)から3年以内に施行される予定のため、施行時期は今後確定します。
※4:公布日(2025年6月20日)から3年以内に施行される予定のため、施行時期は今後確定します。
2026年以降の法改正で押さえておきたいポイント
2026年以降も、人事・労務分野では法改正が継続的に予定されています。すでに決定している内容を中心に、今後押さえておきたいポイントを整理します。中小企業にも影響が広がる改正が増えている
近年の法改正では、従来は一定規模以上の企業のみが対象とされていた制度について、対象範囲が段階的に拡大されるケースが増えています。特に、次のような法律では中小企業にも直接影響する改正が見られます。
・年金制度改正法(社会保険の適用拡大、報酬上限の見直しなど)
・労働安全衛生法(ストレスチェック義務化、フリーランス・一人親方への対応)
・雇用保険法(短時間労働者への適用拡大)
・労働施策総合推進法(カスタマーハラスメント対策の義務化 など)
企業規模を理由に「対象外」と判断することが難しくなっており、中小企業であっても早めに影響範囲を確認しておく必要があります。
法改正は数年単位で続く
2026年以降も、人事・労務分野では法改正が断続的に予定されています。2026年、2027年、2028年と複数年にわたって制度改正が続く見通しであり、「今年だけ対応すれば終わり」という状況ではありません。
改正内容によっては、施行時期が段階的に設定されるケースも多く、単年ごとの場当たり的な対応ではなく、数年単位での対応を前提に準備を進める必要があります。
法改正への対応は、制度を理解するだけでは完結しません。
就業規則や社内規程の見直し、従業員への周知、個別の意向確認や記録の管理など、実務面での負担も確実に増えていきます。
このように法改正が相次いでいる背景には、働き方の多様化や高齢化の進行、就業継続を前提とした制度設計への転換があります。単なる法令対応として個別に対処するのではなく、人事制度全体を見直す視点で対応していくことが求められています。
人事担当者が今から確認しておきたいこと
今後の法改正に備えるため、人事担当者は、制度面と実務面の両方から、次のポイントを順に確認しておくことが重要です。・今後数年分の法改正スケジュールを把握しているか
2026年以降も法改正は連続して予定されています。単年ごとの対応ではなく、数年単位で全体像を整理しておくことで、対応の優先順位をつけやすくなります。
・自社に影響する改正内容を洗い出せているか
すべての改正が自社に直接影響するとは限りません。企業規模や雇用形態を踏まえ、どの改正が対象になるのかを事前に確認しておくことが大切です。
・就業規則や社内規程の見直しが必要な項目はないか
育児・介護、休職、社会保険、労働時間に関する改正は、就業規則や関連規程の修正が必要になるケースが多く見られます。改定時期を見据えて準備しておきましょう。
・周知や個別の意向確認が求められる制度が含まれていないか
法改正によっては、制度整備だけでなく、従業員への説明や意向確認、記録の管理が義務づけられる場合があります。運用方法まで含めて検討しておく必要があります。
・実務負担が増える時期や業務が重ならないか
年末調整や社会保険手続きと重なる改正がある場合、問い合わせ対応や事務作業の負担が大きくなります。繁忙期を見越した体制づくりが重要です。
・社内だけで対応するか、外部の支援を活用するか
改正内容が多岐にわたる場合、社内対応だけで抱え込むと負担が大きくなります。社会保険労務士などの専門家や外部サービスの活用も視野に入れておくと安心です。
このように、法改正対応は「制度を知ること」だけでなく、「実務としてどう回すか」を含めて整理しておくことがポイントです。早めに確認・準備を進めておくことが、施行後の混乱や実務負担の軽減につながります。
まとめ
2025年後期から2026年以降にかけて、人事・労務分野では法改正が継続的に予定されており、対応は一時的なものではなくなっています。育児・介護、社会保険、雇用、年金、ハラスメント対策など、改正内容は幅広く、企業規模を理由に「対象外」と判断できないケースも増えています。
特に今後は、施行時期が段階的に設定される制度や、数年かけて適用範囲が拡大していく改正が多く見られます。 そのため、単年ごとの対応ではなく、数年単位で改正スケジュールを把握し、自社への影響を整理したうえで準備を進めることが重要です。
また、法改正対応は制度を理解するだけでは完結しません。
就業規則や社内規程の見直し、従業員への周知や個別の意向確認、記録管理など、実務面での対応もあわせて検討する必要があります。
今後の法改正に備えるためにも、早い段階から全体像を把握し、「いつ・何を・どこまで対応するのか」を整理しておくことが、施行後の混乱や実務負担の軽減につながります。
その一環として、制度整備とあわせて、万が一の休職や就業不能リスクへの備えを経営の視点で見直す企業も増えています。
よくある質問
Q. 2026年以降の法改正で、自社が対象かどうかはどのように判断すればよいですか?
法改正ごとに対象条件は異なるため、一律に判断することはできません。 企業規模だけでなく、従業員数や雇用形態(正社員・パート・フリーランス等)、事業内容が判断基準になるケースが増えています。 近年は、従来は一定規模以上の企業のみが対象だった制度が、段階的に中小企業へ拡大される改正も多く見られます。 そのため、過去の対応実績だけで判断せず、改正ごとに自社の条件と照らして確認することが重要です。
法改正ごとに対象条件は異なるため、一律に判断することはできません。 企業規模だけでなく、従業員数や雇用形態(正社員・パート・フリーランス等)、事業内容が判断基準になるケースが増えています。 近年は、従来は一定規模以上の企業のみが対象だった制度が、段階的に中小企業へ拡大される改正も多く見られます。 そのため、過去の対応実績だけで判断せず、改正ごとに自社の条件と照らして確認することが重要です。
Q. すべての法改正について、就業規則の見直しは必要になりますか?
すべての改正で就業規則の改定が必要になるわけではありません。 ただし、育児・介護、休職、社会保険、労働時間などに関する改正では、 就業規則や関連規程の修正が必要になるケースが多く見られます。 制度の新設や運用変更がある場合は、形式的な修正だけでなく、 実際の運用と規程内容が一致しているかもあわせて確認することが重要です。
すべての改正で就業規則の改定が必要になるわけではありません。 ただし、育児・介護、休職、社会保険、労働時間などに関する改正では、 就業規則や関連規程の修正が必要になるケースが多く見られます。 制度の新設や運用変更がある場合は、形式的な修正だけでなく、 実際の運用と規程内容が一致しているかもあわせて確認することが重要です。
Q. 法改正への対応は、いつ頃から準備を始めるのがよいですか?
施行直前ではなく、公布後できるだけ早い段階で全体像を把握しておくことが望ましいです。 特に、施行時期が段階的に設定されている制度や、数年かけて適用範囲が拡大する改正については、 数年単位での準備が必要になります。 就業規則の改定や従業員への周知、意向確認が必要な制度については、 直前対応では実務負担が大きくなるため、早めの検討が有効です。
施行直前ではなく、公布後できるだけ早い段階で全体像を把握しておくことが望ましいです。 特に、施行時期が段階的に設定されている制度や、数年かけて適用範囲が拡大する改正については、 数年単位での準備が必要になります。 就業規則の改定や従業員への周知、意向確認が必要な制度については、 直前対応では実務負担が大きくなるため、早めの検討が有効です。
Q. 年末調整や社会保険手続きと重なる法改正への対応が不安です。
年末調整や社会保険の定時業務と重なる改正がある場合、 問い合わせ対応や事務作業が集中しやすくなります。 あらかじめ改正時期と繁忙期を照らし合わせ、 業務分担の見直しや外部支援の活用を検討しておくことで、 実務負担を軽減しやすくなります。
年末調整や社会保険の定時業務と重なる改正がある場合、 問い合わせ対応や事務作業が集中しやすくなります。 あらかじめ改正時期と繁忙期を照らし合わせ、 業務分担の見直しや外部支援の活用を検討しておくことで、 実務負担を軽減しやすくなります。
Q. 法改正対応とあわせて、福利厚生の見直しも検討すべきでしょうか?
法改正対応はコンプライアンス対応にとどまらず、 従業員の安心感や定着につなげる機会と捉える企業も増えています。 近年は、休職や就業不能リスクへの備えとして、 法改正と親和性の高い福利厚生制度をあわせて見直すケースも見られます。 自社の人事方針や従業員構成に応じて検討するとよいでしょう。
法改正対応はコンプライアンス対応にとどまらず、 従業員の安心感や定着につなげる機会と捉える企業も増えています。 近年は、休職や就業不能リスクへの備えとして、 法改正と親和性の高い福利厚生制度をあわせて見直すケースも見られます。 自社の人事方針や従業員構成に応じて検討するとよいでしょう。


