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2024.5.15 パワハラ防止法

【罰則はないが対策は必須】パワハラ防止法とは?中小企業がすべき取り組みを解説

2022年4月以降、すべての企業で「職場におけるパワーハラスメント防止対策を講じること(通称「パワハラ防止法」)」が法的に義務化されました。
しかし同法には罰則がないため、いまだにパワハラ対策を講じていない企業は少なくありません。特に中小企業では人事・労務部門など社内体制の整備が十分とは言えないため、対策義務についての認識がない企業もあるでしょう。

とはいえ、パワハラは従業員の離職や業績悪化、不満をためた従業員からの内部告発・損害賠償請求など、さまざまなリスクをはらんでいます。「罰則がないから」と後回しにせず、できることから始めていきましょう。そこで今回は、パワハラ防止法の基本と中小企業が行うべき取り組みを紹介します。

【2022年4月から中小企業も対象】パワハラ防止法とは?罰則はある?

パワハラ防止法とは、2019年に改正、2020年に施行された労働施策総合推進法に基づき、事業主にパワハラ防止のための対策を義務付ける措置です。当初は大企業のみの義務とされていましたが、2022年4月からは中小企業も含め、すべての事業主が同法の対象となっています。

パワハラ防止法で義務付けられていること

パワハラ防止法では、企業に対して以下2つの措置を義務付けています。

1. 職場におけるパワーハラスメントを防止するため、企業は雇用管理上必要な措置を講じなければならない
2. 従業員がパワハラに関する相談を行ったり、該当相談への対応に協力したりした際に、事実を述べたことを理由として解雇するなど、不利益な扱いをしてはならない


出所:「労働施策総合推進法」第九章 職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して事業主の講ずべき措置等(雇用管理上の措置等)第30条の2

パワハラ防止法に違反しても罰則はないが……

一方で、パワハラ防止法に違反した際の罰則はありません(2024年4月現在)。
たとえ企業がパワハラ対策を講じなくても、罰金や営業停止といった処置が取られることはないのです。

ただし、パワハラ防止法の違反状況によっては、厚生労働省から指導や勧告が入ります。勧告に従わない企業は社名を公表される可能性があり、公表されれば社会的なダメージは避けられないでしょう。

職場における「パワハラ」の定義とは

パワハラ防止法で法的に定められた「職場におけるパワハラ」の定義とは、以下3つの要件をすべて満たすものです。

<職場におけるパワハラの定義>
① 職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であり
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えており、
③ 労働者の就業環境が害されるもの


このように、法的なパワハラの定義は非常にあいまいです。パワハラの判断には、当該の言動に加えて言動が発生した状況や背景、当事者同士の関係性なども含めた総合的な考慮が求められるため、一概に「これがパワハラだ」と定義付けることはできないのです。

企業に求められることは、各要件を読み解いたうえで、職場における個別案件ごとにあいまいな境界線を見極めることです。

①「優越的な関係」とは

優越的な関係とは、「上司から部下」という、職位上の関係だけを指すものだけではありません。以下の関係も優越的な関係と認められます。
・上司と部下の関係
・集団と個人の関係
・知識や経験・スキルを有している労働者とそうでない労働者の関係

たとえ同僚同士であっても、当該業務の経験やスキルが有る人とない人であれば、前者のほうが有利な立場になりえます。また、たとえ部下という立場であっても、他の同僚と結託して特定の上司1人を集団で無視するような行為があれば、「部下から上司へのパワハラ」になりえるでしょう。

②「業務上必要かつ相当な範囲を超える」とは

社会通念に照らし、業務上明らかに必要性のない言動や業務の目的を大きく逸脱した言動が該当します。
たとえば、「有名大学を出ているのにこんなこともわからないのか」「親の顔が見てみたい」という人格否定の言葉は、業務の遂行に必要のない言葉です。頭をたたく、物を投げつけるといった行為も同様です。このように、客観的に見て業務上明らかに不必要な言動は、パワハラと認められる可能性があります。

③「就業環境が害される」とは

当該の言動によって、身体的または精神的に苦痛を与えられた結果、業務において看過できないほどの支障が生じることを指します。
たとえば以下の事例は、労働者の就業環境を害する事例と捉えられる可能性があります。
・過剰な叱責が続いたことでメンタルヘルスに不調が生じ、休職に追い込まれてしまう
・過度な業務を押しつけられて長時間勤務が続き、睡眠不足と過労で倒れて入院してしまう
・故意の暴力によって負傷し、業務に必要な手を一定期間使えなくなってしまう

パワハラになる事例・ならない事例

パワハラは状況や当事者の関係性によって多様にありますが、厚生労働省では以下の事例を代表的な言動の類型として紹介しています。参考にしてみましょう。

代表的な言動の類型パワハラに該当すると考えられる事例該当しないと考えられる事例
身体的な行動・物を投げつける
・体をたたく、足蹴りなど
・誤ってぶつかる
精神的な攻撃・大勢の前で「バカ」「まぬけ」など人格を否定するような言葉を浴びせる
・長時間にわたる叱責を繰り返し行う
・遅刻や無断欠勤といった問題行動が繰り返し見られたため、通常時より強く注意した
・個人情報の流出など重大な問題行動があり、厳しく注意した
人間関係からの切り離し・部署の全員が呼ばれる忘年会や送迎会に1人だけわざと呼ばない
・1人の労働者を集団で無視する
・新規採用者の育成のため、別室で短期集中的に新人研修を実施する
過大な要求・業務上必要な教育を行わないまま厳しい業績目標を課す
・業務とは関係のない私的な雑用を繰り返し命じる
・繁忙期に、通常時より一定程度多い業務処理を任せる
過小な要求・嫌がらせのために仕事を与えない
・管理職である労働者に誰でも遂行可能な雑務ばかり行わせる
・病気など労働者の個別状況に配慮し、一時的に業務内容や業務量を軽減する
個の侵害・労働者の性的志向や性自認など機微な個人情報を本人の了解を得ずに他の労働者に暴露する
(いわゆるアウティング)
・労働者の業務量調整など配慮を目的として、ヒアリングを行う
参考:厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」

パワハラ防止のため、企業が取り組むべき内容とは

パワハラ防止法で義務付けられている措置は、大きくわけて以下の4つです。

① 企業としての方針等の明確化と周知・啓発
② 相談窓口の設置など、相談に応じ、適切な対処をするために必要な体制の整備
③ パワハラ事案発生後の迅速かつ適切な対応
④ そのほか講ずべき措置:プライバシーの配慮など

具体的な措置内容は、厚生労働省が運営するポータルサイト「あかるい職場応援団」で確認できるため、参考にしてみてください。
厚生労働省「あかるい職場応援団」

上記のうち、中小企業において特に重要なのは、パワハラ対応の周知と明文化です。

特に重要なのは従業員全員へのパワハラ対応の周知・明文化

リソースに限りがあり、体制整備も不十分な中小企業において、特に優先すべき取り組みはパワハラに関する従業員の意識改革です。
パワハラは、企業のトップや人事労務担当だけの問題ではありません。一部の担当者が企業サイトにパワハラ方針を掲載したり、相談窓口を設置したりして対策を一通り講じたところで、従業員全員の意識が変わらない限りパワハラはなくならないでしょう。

まずは、パワハラに対して企業としてどのように取り組むのかを明文化し、就業規則でも明確にパワハラの禁止と処分内容を規定します。その内容を全社員向けのメール発信、ポスター掲示等で周知し、企業の本気度を見せることが大切です。特に重要なのは、「どのような行為がパワハラになりうるのか」「パワハラの事実が認められるとどのような処分があるのか」を周知することです。中には、業界の悪しき慣習を自分ではパワハラと思っていない事例もあります。全員の意識を改めることから始めましょう。

パワハラが起きやすい企業の特徴を知っておく

厚生労働省の調査によると、パワハラ経験者と非経験者がそれぞれ回答した職場の特徴として、違いが見られた回答は「上司と部下のコミュニケーションが少ない/ない」「ハラスメント防止規定が制定されていない」「失敗が許されない/失敗への許容度が低い」「残業が多い/休暇を取りづらい」でした。
出所「令和2年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査」

業務過多状態に陥っている職場ではコミュニケーションが希薄になり、多忙ゆえに余裕がなくなるため、失敗を許容できる雰囲気がなくなりがちです。いわゆる「ギスギスした職場」こそ、パワハラの温床と言えるでしょう。
また、業務過多はパワハラだけではなく、メンタルヘルスの不調など違う問題を引き起こす可能性もあります。業務過多による長時間労働が常態化している職場では、改めて業務量を見直し、各従業員が定時で帰れる業務量を基準とすることも必要ではないでしょうか。

まとめ

パワハラ防止法により、職場のパワハラ対策を講じることは全事業主の義務です。
現状は対策を講じなくても罰則はありませんが、だからといってパワハラを放置していいわけではありません。今はSNSやネットを通じて、簡単に企業の情報を発信できる時代です。従業員によるパワハラ告発で企業イメージが悪化すれば、今後の採用や取引先・顧客との関係にも大きな影響が出るため、パワハラ防止対策は喫緊の課題として取り組みましょう。

とはいえ、パワハラ防止法に基づく対策を一通り講じること=パワハラを防ぐことではありません。大切なことは、従業員全員がパワハラに対する意識を改め、パワハラが起こりにくい快適な職場環境を作ることです。パワハラの根本原因には業務過多やコミュニケーション不足などが考えられるた め、まずは業務量を見直し、快適な職場環境を保てるようにしていきましょう。


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服部椿
著・監修

服部ゆい
金融代理店での勤務経験と自身の投資経験を活かしたマネーコラムを多数執筆中。
子育て中のママFPでもあり、子育て世帯向けの資産形成、ライフプラン記事の執筆が得意。


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