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2025.1.15 健康診断

従業員の健康診断は企業の法定義務!必要な健診種類や対象、注意点を解説

従業員の健康診断は企業の法定義務!必要な健診種類や対象、注意点を解説

従業員の健康診断は、すべての企業で実施しなければならない重要な法定義務です。
本記事では、企業が実施すべき健康診断の種類や対象者、実施における注意点について詳しく解説します。

従業員の健康診断は企業の法定義務

労働安全衛生法第66条では、以下のとおり労働者(従業員)の健康診断が義務付けられています。

“事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。”
引用元「労働安全衛生法 第六十六条」

この義務は企業規模に関係なく、すべての事業者に適用されます。また、労働者側にも事業者が行う健康診断を受診する義務があります。
常時50人以上の労働者を使用する事業所では、健康診断の実施に加えて「定期健康診断結果報告書」を所轄労働基準監督署に報告しなければなりません。

実施を怠った企業には罰則あり

健康診断は、常時使用する労働者を抱えるすべての企業が対象です。「従業員数が少ないから」と免れることはできません。
健康診断の実施を怠ると、違反企業は労働基準監督署からの指導を受け、50万円以下の罰金を科される可能性があるため要注意です。
また、健康診断の実施がない企業はコンプライアンスの意識が低いとみなされ、従業員満足度も下がる可能性があります。従業員の健康維持は業務効率や生産性にも関わるため、健康診断は重要な業務と捉えて実施しましょう。

健康診断の種類と実施タイミング

健康診断は大きく分けて、一般健康診断と特殊健康診断・その他に分けられます。
詳しく解説しましょう。

一般健康診断

一般健康診断は、職種や業務内容、勤務時間に関係なく実施する基本的な健診のことです。
下記の5種類あり、一般的なオフィスワークの場合は「雇入時の健康診断」と「定期健康診断」の実施が必須となります。

健康診断の種類対象となる労働者実施時期
特殊健康診断・屋内作業場等における有機溶剤業務に常時従事する労働者
・鉛業務に常時従事する労働者
・四アルキル鉛等業務に常時従事する労働者
・特定化学物質を製造し、又は取り扱う業務に常時従事する労働者及び過去に従事した在籍労働者(一・屋内作業場等における有機溶剤業務に常時従事する労働者
・鉛業務に常時従事する労働者
・四アルキル鉛等業務に常時従事する労働者
・特定化学物質を製造し、又は取り扱う業務に常時従事する労働者及び過去に従事した在籍労働者(一部の物質に係る業務に限る)
・高圧室内業務又は潜水業務に常時従事する労働者
・放射線業務に常時従事する労働者で管理区域に立ち入る者
・除染等業務に常時従事する除染等業務従事者
・石綿等の取扱い等に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務に常時従事する労働者及び過去に従事したことのある在籍労働者
・雇入れの際
・配置替えの際
・6か月以内ごとに1回
※じん肺健診は管理区分に応じて1~3年以内ごとに1回
じん肺健診・常時粉塵作業に従事する労働者など
歯科医師による健診歯科医師による健診
※1深夜業を含む業務や病原体による汚染のおそれがある業務、有害放射線にさらされる業務などが対象。詳細は厚生労働省の資料を参照してください

特殊健康診断・その他の健康診断

一方で、特定の有害な業務に常時従事する労働者がいる場合には、特殊対象です。

健康診断の種類対象となる労働者実施時期
雇入時の健康診断常時使用する労働者・雇入れの際
定期健康診断常時使用する労働者
※次項の特定業務従事者を除く
・1年以内ごとに1回
特定業務従事者の健康診断労働安全衛生規則第13条第1項第2号(※1)に掲げる特定業務に常時従事する労働者・左記業務に配置換えの際、6か月以内ごとに1回
海外派遣労働者の健康診断海外に6か月以上派遣する労働者・海外に6か月以上派遣する際
・帰国後国内業務に就かせる際
給食従業員の検便事業に附属する食堂または炊事場における給食業務に従事する労働者・雇入れの際
・配置換えの際
なお、VDT作業や騒音作業、重量物取扱い業務、身体に著しい振動を与える業務等の特定の業務については、特定の項目について健康診断を実施するよう指針・通達等が発出されています。詳細は、最寄りの都道府県労働局や労働基準監督署に問い合わせてみてください。

健康診断の対象者

健康診断の対象になるのは、「常時使用する全ての労働者」とされています。
雇用形態ごとに、具体的な対象者を見ていきましょう。

正社員

フルタイム勤務の正社員は「常時雇用される労働者」として必ず対象になります。
ただし、正社員とはいえ週に2日だけの雇用契約で、1週間あたりの労働時間数が通常の労働者の4分の3以下である場合は、対象外になる可能性もあります。要件の詳細は都道府県労働局や労働基準監督署に問合せてみてください。

契約社員・アルバイト・パート

雇用形態にかかわらず、下記の(1)と(2)の要件を満たす場合には健康診断の対象です。
(1)・1年以上の長さで雇用契約を結んでいる
・雇用期間をまったく定めていない
・すでに1年以上引き続いて雇用した実績がある
(2)1週間あたりの労働時間数が通常の労働者の4分の3以上ある

つまり、正社員並みの労働時間数があり、1年以上雇用している実態がある場合には、雇用形態にかかわらず健康診断の対象になる可能性があります。

派遣社員

派遣社員は、派遣元の事業所に健康診断実施義務があるため、派遣先企業で健康診断を実施することはありません。
派遣社員から健康診断の実施について問合せがあった際は、派遣元企業に尋ねるよう促しましょう。

健康診断の実施方法

健康診断の実施方法は大きく分けて3つあります。

1.指定の医療機関で受診する

もっとも一般的な方法です。
従業員が一人ひとり病院を予約すると管理が煩雑になるため、会社がすべての健診予約を管理し、医療機関と日程調整を行います。従業員は指定の日時に医療機関で健康診断を受け、後日、会社宛に健康診断結果が送付されます。

2.検診車や社内で集団健診

検診車や社内で集団検診を行う方法です。職場を長時間離脱するのが困難な業種や企業規模の大きな企業で採用されています。企業が指定する日時・場所に健診車と医療スタッフが赴き、一斉に検診を実施するため、医療機関に移動する時間や日程調整の負担を軽減できます。

3.健康診断予約代行サービスを使う方法も

健康診断予約代行サービスとは、医療機関への健康診断予約から、従業員の日程調整、進捗管理などの業務を外注できるサービスです。業者によってサービス内容は異なり、中には健康診断結果のデータ分析や有所見者の抽出、労基署報告などを対応している場合もあります。従業員が多い企業ほど予約業務の負担が重くなるため、社内の負担を減らすために外注を検討してみるのもいいでしょう。

一般的な定期健康診断実施時の流れと注意点

一般的な定期健康診断実施時の流れは以下のとおりです。

1.対象者の選定: 労働安全衛生法に基づき、対象となる従業員を確定
2.医療機関または健診車の選定: 検査項目や予算に合わせて、適切な医療機関または健診車を選ぶ
3.日程調整: 従業員の都合を考慮し、実施日程を決定
4.事前説明: 従業員に健康診断の目的や重要性を説明し、受診を促す
5.健診の実施: 健康診断を実施
6.結果の通知:
(異常なし)従業員に個別に結果を通知する
(異常所見あり)医師、保健指導師による保健指導実施(努力義務)
7.結果の管理: 健康診断の結果を健康診断個人票に記録する
(50名以上の労働者がいる事業所)労働基準監督署に結果を報告
8.就業上の措置:健康診断の結果および医師からの意見聴取の結果、必要に応じて業務の見直しなど就業上の措置を講じる

実施の際は、2つの注意点に気を付けてください。

注1.費用は全額企業が負担する

原則として、健康診断を実施する際の費用は全額企業が負担します。
なお、任意のオプション検査追加費用や後日再検査を受ける場合の費用については、基本的に従業員負担となります。

注2.健康診断の時間も給与を支払うのが望ましい

特殊健康診断の受診にかかる時間は労働時間に含まれるため、賃金の支払いが必須です。一方で、通常の一般健康診断を受けている時間の賃金については、事業者に支払い義務はありません。ただし、厚生労働省は下記の見解を示しており、実際には多くの企業が健康診断中の給与も支払っています。

“一般健康診断は、一般的な健康確保を目的として事業者に実施義務を課したものですので、業務遂行との直接の関連において行われるものではありません。そのため、受診のための時間についての賃金は労使間の協議によって定めるべきものになります。ただし、円滑な受診を考えれば、受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいでしょう。”
引用元:厚生労働省「健康診断を受けている間の賃金はどうなるのでしょうか?」

健康診断の費用目安は?抑える方法はある?

一般的な健康診断費用の相場は従業員1人につき5,000~15,000円程度で、医療機関によっても異なります。
法定健康診断の費用は事業者に負担義務があるため、厚生労働省や各団体が実施している助成金を活用することはできません。ただし、企業が加入している健康保険によっては費用の補助を受けられる可能性があります。

たとえば、多くの中小企業が加入する協会けんぽ(全国健康保険協会)では、法定定期健診の健診結果データを提供することにより、法定定期健康診断の費用を40歳以上の特定検診に置き換え、費用負担を軽減することが可能です。
詳細は、加入先の健康保険に確認してみてください。

まとめ

従業員の健康診断は単なる法的義務にとどまらず、労働者の健康を守り、企業の持続的な成長を支える重要な取り組みです。企業は法律に基づき、適切なタイミングで必要な健康診断を実施し、労働者の健康と安全を守る責任を果たしましょう。

なお、企業向け団体保険のGLTD(団体長期障害所得補償保険)では、一部の商品に健康診断関連のサービスが付帯されています。従業員からの病気・健康に関する電話相談サービスや医療機関の情報提供・紹介、人事労務担当者向けの産業保健体制構築支援などがあるため、検討してみてはいかがでしょうか。



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服部椿
著・監修

服部ゆい
金融代理店での勤務経験と自身の投資経験を活かしたマネーコラムを多数執筆中。
子育て中のママFPでもあり、子育て世帯向けの資産形成、ライフプラン記事の執筆が得意。


■参考資料
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000103900.pdf
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000136750.pdf
https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-roudoukyoku/var/rev0/0120/0350/201766134629.pdf
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/file/20230731002.pdf

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