2024年度から、日本国民の健康づくり運動における新計画「健康日本21(第三次)」が始まりました。
第三次計画では新たに「健康経営の推進」が目標に加わり、行政と民間企業の連携による健康対策が求められています。
本記事では、健康日本21(第三次)の概要や策定の背景、これから企業に求められる健康対策について解説します。従業員の健康管理を考える際の参考にしてください。
健康日本21(第三次)と策定の背景
健康日本21とは、健康増進法第7条に基づき、厚生労働大臣が定める「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針」です。国民の健康づくりにおける基本的な方向や具体的な目標が定められており、約10年ごとに内容が改正されています。【日本における健康づくり運動の歩み】出典:厚生労働省「健康日本21(第三次)の概要」
2024年度に開始した第三次計画では、2013年度から約10年実施された第二次計画の最終評価や今後の社会変化をふまえた内容になっています。背景を理解するため、まずは第二次計画の評価と今後予想される社会変化を見ていきましょう。
健康日本21(第二次)の評価
「健康日本21(第二次)」では、設定された53の目標のうち、およそ半数が目標値を達成、または改善傾向にあるという結果を示しました。以下の表のとおり、最終目標である健康寿命は着実に伸びています。
【健康日本21(第二次)の評価】出典:厚生労働省「健康日本21(第三次)の概要」
一方で、「睡眠による休養を十分取れていない者の割合の減少」や「メタボリックシンドロームの該当者及び予備軍の減少」など、一部の目標は悪化しました。また、2020年に始まった新型コロナウイルス感染症の感染拡大を機に、健康格差が拡大したという指摘もあります。
「健康格差」とは、地域や社会経済状況によって異なる健康状態の差です。健康日本21では、都道府県(自治体)によって健康寿命の差があることを健康格差とし、格差を縮小する目標が設定されています。
予想される社会変化への対応
第二次計画の評価や課題のほか、計画の策定には社会動向の考慮も必要です。 日本では少子高齢化が進み、総人口と生産年齢人口の減少が続いています。これに伴い、女性や高齢者の社会進出、単身世帯の増加によって多様な働き方が広まり、各人の健康課題も多様化しています。 また、DXの加速や新興感染症に備えた対応も考えなければなりません。第三次計画では、こうした社会変化を反映し、新しい視点が取り入れられています。健康日本21(第三次)のビジョンと新しい視点
第二次計画の評価や今後の社会変化をふまえ、健康日本21(第三次)では「全ての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現」というビジョンが掲げられました。【健康日本21(第三次)のビジョン】出典:厚生労働省「健康日本21(第三次)の概要」
このビジョンを達成するために、5つの新しい視点が取り入れられています。
【5つの新しい視点】
・女性の健康に関する目標を新たに設定
・健康に関心の薄い人へのアプローチを推進
・多様な主体を巻き込んだ健康づくりの推進
・具体的なアクションプランの提示
・ICTの利活用を促進
冒頭で言及した「健康経営」も新しい視点の1つです。これにより、企業は行政と連携して健康対策を進めることが、より一層求められています。
健康日本21(第三次)で企業にかかわりのある目標は5つ
健康日本21(第三次)では「健康寿命の延伸・健康格差の縮小」という主目標のもと、4つの基本方針に基づく51の目標が設定されています。【健康日本21(第三次)の基本方針と主な目標】出典:厚生労働省「健康日本21(第三次)の概要」
51ある目標項目の一覧は厚生労働省のウェブサイトで確認できます。
このうち、特に企業に関わりのある目標は以下の5つです。
【企業に関わりのある5つの目標の抜粋】
◆個人の行動と健康状態の改善に関する目標
・週労働時間60時間以上の雇用者の減少
◆社会環境の質の向上に関する目標
・【新】健康経営の推進
・スマート・ライフ・プロジェクト活動企業・団体の増加
・必要な産業保健サービスを提供している事業場の増加
・メンタルヘルス対策に取り組む事業場の割合の増加
出典:厚生労働省「健康日本21(第三次)の推進のための説明資料(その1)および(その2)」
各目標の詳細を見ていきましょう。
週労働時間60時間以上の雇用者の減少
「週労働時間 40 時間以上の雇用者のうち、週労働時間 60 時間以上の雇用者の割合の減少を目指す目標」です。心身の健康に十分な睡眠は欠かせません。しかし、日本人の睡眠時間は世界的にも短く、第二次計画でも一部の睡眠指標は悪化しています。なお改善策として労働時間を制限するほか、厚生労働省では“仕事の終業時刻と次の始業時刻の間に一定時間以上の休息時間(インターバル時間)を設けることも必要”としています。
企業においては、労働時間とインターバル時間を考慮し、従業員が十分な睡眠と休養を取れる勤務体制の整備が重要です。
週の労働時間やインターバル制度については、下記の記事でも解説しています。参考にしてみてください。
▼「働き方改革関連法とは?人手不足必至の中で中小企業ができる取り組みとは」
メンタルヘルス対策に取り組む事業場の割合の増加
労働安全衛生調査の対象事業場のうち、「メンタルヘルス対策に取り組む事業場の割合を増やす目標」です。厚生労働省の調査によると、仕事に関して強い不安やストレスを感じる労働者は半数を超えています。企業においては、メンタルヘルス不調や過重労働による健康障害を防ぐための取り組みが必要です。
従業員のメンタルヘルス対策については、以下の記事も参考にしてみてください。
▼「職場のメンタルヘルス対策は、従業員のストレスチェックから始めよう」
▼「ストレスチェック制度の義務化とは?意味あるチェックにするため企業ができることは」
スマート・ライフ・プロジェクト活動企業・団体の増加
健康づくりに取り組む企業・団体・自治体を支援する「スマート・ライフ・プロジェクト(SLP)に参加する企業や団体数を増やす目標」です。健康増進の基盤整備には、行政と企業・民間団体、産業間の連携が不可欠です。企業はSLPへの参加をはじめ、行政や民間団体と協力して健康づくりを推進していくことが求められます。
【新】健康経営の推進
健康経営に取り組む企業数に目標値を設定し、「健康経営の推進を目指す目標」です。健康経営は従業員の健康寿命延伸だけではなく、モチベーションの向上や生産性の改善、組織の活性化や業績向上に寄与します。結果として、労働力不足の解消にもつながる可能性があります。企業には、これまで以上に健康経営の浸透と深化が求められます。
健康経営については、下記の記事も参考にしてみてください。
▼「健康経営とは?導入効果やメリット、導入ポイントや事例を解説」
必要な産業保健サービスを提供している事業場の増加
労働安全衛生調査の対象となる事業場のうち、「必要な産業保健サービスを提供している事業場の割合を増やす目標」です。すでに各企業では法令に基づく健康診断やストレスチェックなどが実施されていますが、労働者の健康課題は多様化しています。各企業の特性に応じた健康課題に対処し、必要な産業保健サービスを提供することが求められています。
たとえば、社外の専門家と連携して専用相談窓口を設けたり、社内に健康用品を設置したりすることも、産業保健サービスの一環です。
自社に合った対策を検討し、健康経営とあわせて取り組みましょう。
まとめ:健康経営の実施に向けて
健康日本21(第三次)で新しく「健康経営の推進」が設定され、企業における従業員の健康管理の重要性はますます高まっています。これを機に、各社に適した健康対策を考えてみてはいかがでしょうか。
健康経営への取り組みの一環として、GLTDに加入して福利厚生を充実させる方法もあります。
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著・監修
服部ゆい
金融代理店での勤務経験と自身の投資経験を活かしたマネーコラムを多数執筆中。
子育て中のママFPでもあり、子育て世帯向けの資産形成、ライフプラン記事の執筆が得意。